漆の性質

早いものでこのブログを始めてからもう1年が経ちました。

漆器のことや山中温泉について少しでも知ってもらうことが出来ているなら嬉しいです。

さて、今回は漆の性質についてご紹介したいと思います。

漆は「漆の木」の幹に傷をつけて採取する樹液から出来ている天然塗料です。採取した漆を精製すると飴色の透き漆が出来ます。漆器といえば朱や黒が代表的ですが、飴色の透き漆に鉄粉を加えると黒漆になり顔料を加えることで朱や緑などのいろんな色の漆を作ることが出来ます。

             

このように作られた漆は酸、アルカリ、アルコールにも強く耐久性、耐水性、耐熱性が非常に高いので漆器だけでなく建物や仏像、芸術品などにも幅広く用いられています。さらに漆を塗った面は抗菌作用があり菌や虫などの繁殖を妨げる効果もあります。また、接着剤としても優れているので陶磁器を修復する「金つぎ」にも古くから漆が使われています。

実は漆は乾き方にとても特徴があります。「乾く」というと温度が高く乾燥しているほうがいいイメージがありますが、漆が乾くために最適なのは温度約20℃~25℃、湿度60%~80%と言われています。空気中の水分を取り込んでから乾くのが漆なのです。

そのため職人たちは季節に合わせて漆の種類を変えています。夏は湿度が高いので乾きやすいです。乾くのが早いと表面だけが乾いてしまいシワが出来てしまうのでゆっくりと乾くように漆を調整します。逆に冬は乾燥しますので通常の漆ですといつまでたっても乾かないので早く乾く漆を使います。自然の気候に合わせて調節しなければならない漆は天然素材ならではの苦労ではないでしょうか。

このような性質を持つ漆は年月を増すほど硬化しますので、使えば使うほど艶が出て光沢が増し美しくなります。ぜひ永く使ってその美しさを感じて頂ければと思います。

最後になりましたが本年もどうぞよろしくお願い致します。