「摺り漆」でお椀が塗りあがる工程

今回はお椀を「摺り漆」で塗り上げる様子をご紹介いたします。

まずは「木地固め」という工程からです。

電動ロクロを回転させ、お椀の外側→内側の順に
刷毛を用いて全体に漆を塗ります。

※電動ロクロは右足にスイッチがあり、
踏み込みの角度で回転の速さを調整します。

とにかく木地の白い所が残らないようにしっかり塗り、
紙で余分な漆を拭き取ります。

最後に轆轤から外してさらに紙で拭きあげ、風呂棚に入れて1晩乾かします。

※漆は空気中の水分と結びついて固まる性質があります。
そのため、塗った漆を乾かすために
風呂棚の中は事前に水を撒き、中の湿度を上げておきます。

※こちらの職人さんはこの工程を漆で行っていますが、
以前ブログでご紹介した職人さんは、別の塗料を用いて行っています。
(職人さんごとに少しずつ工程や用いる道具などに差があるそうです。)

次は「目止め」の工程です。

この工程で木地の表面の細かな凹凸を埋めることで
水が木地にしみ込みにくいようになります。

目止めの材料は砥の粉、水、漆。

(砥の粉)

ボウルに砥の粉を図り入れ、固まりを潰してから
水を少しずつ加えて練り混ぜていきます。

さらに生漆を加えて、最後は轆轤を使ってよく混ぜ、
ラップをかけて一晩置いて馴染ませます。

はじめは赤みがかった色ですが、一晩寝かせると
全体が馴染んで黒っぽい色に変わります。

これを刷毛で木目が埋まるように木地全体に塗ります。

さらにゴムベラで余分な目止めをこそぎ取り、さらに
布切れで拭き取ります。

一晩乾かせば、次は「研ぎ」の工程です。

ロクロに木地をセットして、足のスイッチでロクロを回転させながら
ペーパーを当て、研いでいきます。

こちらの工程を少しだけ体験させてもらったのですが、
ロクロに木地を真ん中にセットしないと回転軸がブレてしまい
まずはロクロに木地を置く所から四苦八苦してしましました。
そして思いのほか均一に研ぐことが難しかったです。

うっかりしていると
「スマ」と呼ばれる部分(お椀でいうと高台の渕の狭い部分)を
研ぎ残してしまいそうになるので
意識的に「スマ」の細かな部分を研ぐよう気を配りました。

そして、いよいよ「摺り漆」を行います。

「木地固め」同様、全体に漆を刷り込みます。

漆が余分についたままにならないよう注意しながら
紙でよく拭き上げます。

塗りあがったものは風呂棚に入れて一晩乾かします。

この摺り漆の工程を3回繰り返します!

3回目の摺り漆の工程では、
強く拭きあげてしまうと漆の艶が弱くなるため、
1回目ほど強く拭きとらないよう
漆を残し気味にしながら拭きあげます。

ムラなく均一に漆を残す加減はとても難しいそうです。

塗り重ねた所でようやくお椀が完成しました!

以上の工程をまとめると、

①木地固め(→ 一晩乾かす)
②目止め(→ 一晩乾かす)
③研ぎ
④摺り漆(1回目)(→ 一晩乾かす)
⑤摺り漆(2回目)(→ 一晩乾かす)
摺り漆(3回目)(→ 一晩乾かす)

そして仕上がりが良ければ…
完成!

となります。

真っ白な木地が工程を重ねる毎に、漆の色味や艶が深まっていきます。
(欅37ういの汁椀 茜すり)

天然木ならではの風合い、漆の深みを両方生かすことができる「摺り漆」
この塗り方のお品は沢山ございますので
工房静寛にてお選びいただけたら幸いです。

また、工房静寛では木地挽きや刷毛を使った上塗りの工程などの
山中漆器の工程を間近で見学できます。

普段なかなか見られない職人の手しごとを
是非間近でご覧ください。

(N&H)