伝統工芸体験・取材~北海道・八雲町 木彫りの熊~

はじめに
これまでこのブログでは、山中漆器を中心に「漆器ってなに?」「お手入れは大変?」といった疑問を、Q&A方式でお届けしてきました。
漆器をより身近に感じてもらうことを目的に、基本的なことから少し踏み込んだ話まで、少しずつ紹介しています。

前回のQ&A総まとめのブログはこちら!👉【これまでの漆器~今までのブログの総まとめ~】

日本には山中漆器の他にも多種多様な伝統工芸品が沢山あります。その土地ならではの文化や人に触れ、各地の伝統工芸を実際に取材・体験してみたい——
そんな思いから始めたのが、この「伝統工芸体験・取材」です。

として訪れたのが、
北海道八雲町にある「熊友(ゆうゆう)工房」。

木彫りの熊発祥の地で、実際に熊彫りを体験してきました。

八雲町と木彫りの熊

八雲町は、北海道土産として広く知られる「木彫りの熊」の発祥地。
観光土産のイメージが強い一方で、その背景には長い歴史と、土地に根付いた技法があります。

工房で教えていただいたのは、
柴崎重行さんが受け継いできた
斧を使う「はつり彫り」の技法。

ノミや彫刻刀ではなく、斧で木を割り、削り、形を生み出していく。

作業は大胆でありながら、
「削りすぎないこと」
「空間を作りすぎず、木の量感で表現すること」
を大切にしているのが印象的でした。

熊友工房と“続けるための工夫”

熊友工房の店主・小熊さんが熊彫りを始めたのは約10年前。

 

きっかけは、
「観光地なのに、観光客が気軽に買える木彫りの熊が少なくなっている」
と感じたことだったそうです。

本格的な木彫りの熊は、完成までに数日を要します。
そのため、工房では
・観光客向けの体験
・地元の方向けに、誰もが思い描く“王道の木彫り熊”を彫る教室
と、目的に応じた形で熊彫りに触れられる場をつくっています。

伝統を守るだけでなく、

「どうすれば今の暮らしの中で続いていくか」を常に考えている姿勢が、とても印象に残りました。

木彫りの熊体験

ここからは、実際に体験してきた木彫りの熊の作り方を、写真とともに簡単にご紹介していきます。

まずは、このような木の塊からスタートします。
小刀と彫刻刀を使い、少しずつ削り出していきます。

まずは顔の輪郭を削り、耳などのパーツの位置に印をつけておきます。
この段階で全体のバランスを決めていくのが大切だそうです。

次に、お尻の部分を丸く削っていきます。
小刀でやや大胆に削っていきますが、全体のバランスを見ながらきれいな曲線に整えるのが思った以上に難しく感じました。

続いて、顔まわりの調整と足を彫っていきます。
こうした細かい部分は、小刀よりも彫刻刀のほうが扱いやすく、少しずつ形を整えていきました。

最後に、お好みの表情になるよう顔を仕上げたら完成です。

店主の小熊さんのお話を聞きながらの作業で、完成までおよそ三時間ほどでした。

体験してみて感じたのは、左右対称のバランスを意識しながら削ることの難しさです。
思い描いた通りに小刀を動かすのは簡単ではありませんでしたが、小熊さんが横で丁寧に修正やアドバイスをしてくださるので、初心者でも安心して作業を進めることができました。

震災をきっかけに生まれたつながり

今回の取材で、特に心に残ったのが
輪島塗と木彫りの熊のコラボレーションの話です。

そのきっかけは、能登半島地震。
震災を通じた支援や交流の中で、
輪島塗と八雲町の木彫り熊がつながり、新たな取り組みが生まれました。

現在、小熊さんは石川県を含む全国各地を巡りながら、木彫りの熊のワークショップを開催しています。
4月にも開催予定があり、産地や地域を越えた交流が続いています。

支援という行動から、
伝統工芸同士、人と人がつながっていく。
その話を聞き、胸が熱くなりました。


極寒の地で感じた、人の温もり

北海道の冬は、やはり厳しい寒さです。
けれど、熊友工房で過ごした時間は、不思議ととてもあたたかいものでした。

木に触れ、話を聞き、手を動かし、
ものづくりを通して人とつながる。
極寒の地・北海道で、
人の温もりを強く感じる体験となりました。

おわりに

伝統工芸は、過去から受け継がれてきた技術であると同時に、
今を生きる人たちの選択によって、未来へとつながっていくものだと思います。

今回の八雲町での体験は、
「続けるための工夫」
「支援から生まれる新しい縁」
その大切さを、あらためて実感する時間でした。

これからも、各地を巡りながら、
伝統工芸の現場と、人の想いを伝えていきたいと思います。

おまけ
小熊さんに紹介されて訪れてみた、喫茶ホーラク。
そこで、壁一面に並んだ木彫りの熊を鑑賞しながら、温かいコーヒーとチョコレートパフェをいただきました。様々な形の熊が飾られている様子は圧巻でした!