皆さんこんにちは。
秋の気配も少しずつ深まり、過ごしやすい日が増えてきましたね。
以前ご紹介した「うるし刷毛」について
今回は上塗り(仕上げ塗り)用の刷毛の扱い方を中心にお話しします。
以前ブログでうるし刷毛について書いたことを3点でまとめてみました。
① 刷毛は柄の部分全体に毛が埋まっている
② 少しずつ削り出しながら使っている
③ 毛の材質は人の髪の毛である
(※詳しくは 奥深い「うるし刷毛」の世界 その一 から)
ところで、塗りの職人さんが行っている
②の削り出す工程、実は大変手間と時間をかけて行っています。
工程を簡単に書き出すと、以下のようになります。
↑毛は漆と糊で固められた状態で、カチカチに固まっています。
刷毛に含まれる糊を落とすため、石鹸をつけてから叩いていきます。
上塗り用の刷毛はなるべく漆を含ませて厚めに塗るために
刷毛の毛の出ている部分を長めに削ります。
反対に下塗り用は短めに削るそうです。
塗る品物の面積や塗り上げる箇所、下塗り用や上塗り用などで、
何本もの刷毛を使い分けています。
刷毛の選択を間違えると、塗り上げるのに時間がかかったり、
余計な手間が増えてしまうので、場面に適した刷毛を使い分けています。
例えば、横幅の広い刷毛は効率的に広い面を均一に塗ることができます。
反対に横幅の狭い刷毛は、細かい面積の部分を塗ったり、
高台の隙間の漆をこそげ取るのに使います。
高台の隙間(←の部分)のような
余分に漆が溜まりやすいポイントは
小さな刷毛を使い、余分な漆を落とします。
こうすることで漆の表面が縮まず、
均一に塗りあがります。
また、うるし刷毛は適切に手入れをしないと、
空気中の湿気によって、刷毛についた漆が固まり
刷毛先が固まって使えなくなってしまいます。
そこで塗りに入る直前に、菜種油とヘラを使いゴミを掻き出します。
さらに漆を含ませて刷毛を何度も掻き出します。
これを繰り返すことで、刷毛の中の細かいゴミを掃除します。
※菜種油を含ませてヘラでしごき、
刷毛を洗う様子
使い終わりも同様に、刷毛に漆が残らないよう
菜種油を含ませながら丁寧に漆を取り除きます。
最後は毛の保湿のために、
毛先にきれいな菜種油をつけて保管します。
職人は、何本もの刷毛に対して
こうした細やかな手入れを行いながら漆を塗っています。
最近はうるし刷毛を作る職人さんが少なくなり、
さらに刷毛の材料となる髪の毛も手に入りにくくなっているようです。
一つの品物の中に、沢山の職人さん達の伝統の技術や想いが詰まっていることを
皆様に少しでも感じていただけるよう、
これからもお伝えしていければと思います。
(N&H)