奥深い「うるし刷毛」の世界 その一

今回は、漆を塗るめに必要不可欠な道具のひとつ、
「うるし刷毛」についてお話ししたいと思います。

漆を塗る為に作られたうるし刷毛は、普通の刷毛と異なる作りになっています。

 

<①うるし刷毛の構造>

普通の刷毛は、長い柄の先に毛が束ねてある作りですよね。

 

対してうるし刷毛は、柄の部分全体に毛を挟んだ構造になっています!

そして、使いやすい長さの毛先が出るまで少しずつ削り出して使います
(例えるなら鉛筆を削りながら使っていく様なイメージです。)

※「塗師屋包丁」という長い刃の道具で削り出します。

縦の長さは25㎝程。
削って使うので長く使うほどだんだん短くなっていきます。
横幅はおよそ3㎜~60㎜程、色々な幅のものがあります。

塗る品物の面積や塗り上げる箇所、下塗り用や上塗り用などで、
何本もの刷毛を使い分けています。

削り出したばかりの毛は、
漆と糊で固められた状態で、カチカチに固まっています。

金槌で丁寧に叩いてほぐさないと漆を塗ることができません。

※触って確認しながら毛先をほぐしていきます

職人は刷毛に対してマメに手入れを行いながら使い込んでいます。

 

<②材料は髪の毛!?>

うるし刷毛は毛の材料にも違いがあります。
なんと人の髪を使用しているのです!

どうして人の髪で作られているのか?

それは、髪の毛が動物の毛に比べて細いこと、
そして長さがあることがポイントです。

細いことで、漆を塗った時に、刷毛目が立ちにくく美しい塗面に仕上がります。

また、普通の刷毛は塗っていて途中で刷毛の毛が抜けてしまう事がありますよね。

塗っている内に毛が抜けてしまうと、塗った面に毛が残ってしまい、
せっかくの塗りが台無しになってしまいます。

しかし、うるし刷毛の場合は、
柄の先から端まで髪の毛を途切れなく束ねて埋め込む事により、
塗っている最中に毛が抜けにくい作りになっています!

そのため、長い髪の毛は漆塗り用の刷毛に使われているのです!

実際に上塗り職人がどのように刷毛を扱っているのか、
またの機会に具体的にご紹介させていただきます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

(N&H)