それぞれの漆器

こんにちは。いらっしゃいませ!
前回は、時代に合わせて柔軟に形を変えていった山中漆器の伝統についてのブログでした。

前回のブログはこちら!👉【つながりの漆器】

今回のブログは、「山中漆器は他の産地とどう違うの?」というテーマでまとめてみました。
山中は伝統技術と近代技術が共存する、とても珍しい産地。
その魅力を分かりやすくQ&A形式でお届けしますよ!

Q.山中漆器ならではの強みって何ですか?
A.「薄挽き・轆轤技術・精巧さ」この3つが最大の特徴です。
◆ 伝統漆器としての強み
・“薄挽き(うすびき)”の精度が非常に高い

・山中独自の轆轤(ろくろ)技術で、木目を美しく生かせる

・均一な厚み・滑らかな肌といった 木地師の町ならではの品質

職人によるわずかな厚みの違いも見逃さない精巧さ

木地師と塗師が互いの工程を読み合い、木地のゆとりや塗りの厚みまで計算して仕上げる“連携の精度”も山中漆器の強みです。

◆ 近代漆器としての強み
・樹脂・合成塗料による家庭用・贈答用の生産量は日本トップクラス

・色・形・価格帯のバリエーションが広い

・量産でもクオリティが高く、ギフトや量販にも強い

「伝統漆器から近代漆器まで一貫して作れる唯一の産地」

山中はこれが大きな魅力です。

Q.木地づくりは他の産地とどう違うの?
A.一番の違いは、圧倒的な“薄挽きの技術力”です。
◆ 山中漆器の木地の特徴
・「縦木」を活かした木取りで、美しい木目と丈夫さを両立

・**横挽き(台挽き)**という独自の挽き方

・均一に薄くしても強度を保てる

◆ どれくらい薄いの?
口元(縁)で 1.5〜2.0mm

ものによっては 1mm以下 も可能

→ 量・精度・均一性は山中が全国トップレベル

◆ 他の産地との違い(ざっくり比較)
輪島:塗りの堅牢さと豪華な蒔絵が得意

越前:塗り中心、板物・指物の技術が高い

会津:蒔絵が華やか、迎春ものが多い

山中は特に「椀もの」で抜群の品質を誇ります。

Q.漆塗りの特徴は? 他産地とどう違う?
A.山中は“木地を見せる塗り”も“高級な茶道具”も器用にできる産地です。
◆ 伝統漆器
拭き漆・目はじき・真塗・変わり塗りなど幅広い技法

使うほど深みが増す「経年美化」

軽くて口当たりがやさしい

塗師・蒔絵師の技術も高く、茶道具も制作可能

◆ 近代漆器
ウレタン塗り(スプレー)が中心

カラフル・メタリック・柄物など表現が豊富

業務用や大規模需要に向く

山中は「伝統」と「近代」が共存している非常に珍しい産地です。

Q.山中漆器はどんな用途に向いている?
A.日常の食卓から旅館・飲食店まで、とにかく“実用性が高い”のが山中です。
◆伝統漆器に向くもの
汁椀・飯椀

茶道具(棗・香合)

お盆・酒器・茶筒など

→ 特に椀ものは全国トップレベルの生産量

◆近代漆器に向くもの
弁当箱・重箱

汁椀・皿・ランチプレート

ギフト・量販品

→ 軽くて丈夫、食器洗浄機や電子レンジ対応もあり、扱いやすい

Q.他の産地の漆器と比べて、見た目の違いは?
A.

 

 

 

 

 

山中漆器のお椀

輪島漆器のお重、お椀、箸

津軽塗の茶筒

会津漆器のお重と盃

越前漆器のお椀やお盆

Q.山中漆器の歴史は?
A.400年以上続く“木地師”がルーツです。
木地師が集住し、技術が発展。湯治客へのお土産として広まりました。そこに、塗りや蒔絵が加わり総合産地へ。

現在では近代漆器が加わり、現在は国内最大級の漆器産地に成長しました。

特に山中は、木地轆轤(伝統)+近代漆器(工業) が両立しているのが特徴です。

Q.他の産地にも“漆器”と“塗り”の違いはあるの?
A.あります。山中だけの区別ではありません。
○○漆器=木製+本漆(伝統工芸品)

○○塗=合成塗料や樹脂製も含む広いカテゴリー

例:
若狭塗 → 樹脂食器含む

津軽塗 → 加飾技法名として使われる

山中では、
[山中漆器] → 天然木+本漆

[山中塗] → 樹脂・金属・ガラスなど

と明確に分けています。

Q.山中漆器ならではの取り組みは?
A.いくつかご紹介します。
・轆轤技術継承のための研修施設を運営

・若手職人育成プログラム

・伝統技術の記録・公開

・工房見学やオープンファクトリーの整備

など、山中では次の世代へ伝統をつなぐための取り組みを積極的に行っています。

Q.修理(塗り直し)は産地によって違いがありますか?
A.大きな違いはありませんが、“考え方”が職人ごとに異なります。
技術そのものは産地差より職人差の方が大きいですが、
「どこまで直すか」「どう仕上げるか」という価値観で仕上がりは変わります。

Q.職人の分業体制は産地で違う?
A.分業制はどの産地でも基本は同じですが、技法や道具の違いがあります。
山中では
木地挽き

漆塗り

蒔絵

に大きく分かれていますが、
輪島・越前・会津でも基本的な分業構造は同じです。
ただし、使う道具・塗りの哲学・仕上げの美意識は産地ごとに異なります。

今回のQ&Aはここまでです!ご覧いただきありがとうございました。
山中漆器は
「精密な木地挽き」×「実用性の高さ」×「伝統と近代の両立」
という強みを持つ、全国でも非常に珍しい産地です。
とはいえ、山中以外の産地にもそれぞれ個性豊かで魅力あふれる漆器がたくさんあります。
輪島の堅牢さ、津軽の華やかさ、越前の実直な美しさ──どれも長い歴史の中で磨かれてきた誇るべき技です。
ぜひ、山中漆器だけでなく各地の漆器にも触れながら、
“自分の暮らしにぴったりの一品”を見つけてみてくださいね。

次回は、今までのQ&Aの総まとめを行う予定です。お楽しみに!

出典・写真提供

・輪島漆器:石川県観光連盟